Egurotのブログ

教職勉強会の師範のブログ

学校における働き方改革について②

1 日本の先生の働き方

 今回、学校における働き方改革のきっかけとなったのは、大手企業の過酷な長時間労働による過労死、自殺などの問題でした。

 この労働時間の課題を学校の教員に当てはめて考えた時、大きく二つの課題が見えてきました。その一つは、諸外国の教員の働き方、仕事の内容を比べると、日本の教員が本来最も大切とされる子ども達への「学習指導」より、事務仕事や部活動などあまりにも多くの内容を抱えている姿でした。

(参考)

www.newsweekjapan.jp

 そして、二つ目に、日本の教師の仕事量、時間が年々増加傾向にあるということでした。

 その背景には、保護者や地域の目が教員に厳しくなってきていることや、新たな教科、領域が学校の指導に加えられてきたことが挙げられます。

 情報化が進めば「情報教育」「プログラミング教育」いじめが問題化されると「道徳教育」ニートが問題になれば「キャリア教育」、国際化のために「英語教育」・・・・30年前の学校教育とは格段に忙しさが増えています。多くなった仕事だから、少し手を抜こうとしてもできません。今は昔よりもさらに一人一人を大切にするために「特別支援教育」も充実させなければなりませんし、・・・・さらに、虐待問題、保護者のクレーム対応などなど、味方になって応援してくれていた保護者へは、さらにきめ細かな配慮がないと問題がこじれるケースも多くあり気の休まる間もありません。

 当然、学校での仕事は、大学で学んできた以上の専門性が求められ、きめ細かい仕事をするために遅くまで残って仕事をせざるを得ない状況になっています。

 国や教育委員会は各学校に、遅くまで仕事をしない働き方をと、残業は**時間までと数値目標を示しますが、これは先生達をさらに苦しめ、仕事をしていても残業をカウントしない、やりかけの仕事を持ち帰るなど、「見せかけの働き方改革」は限界にきています。

 

2 今回の改革は本気!?エポックメーキングになれるか・・・

 様々な議論、紆余曲折を経て平成31年1月25日中央教育審議会から「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(答申)」が出されました。

 この答申の冒頭、「はじめに」では下記のような文章で締めくくられています。

‘子供のためであればどんな長時間勤務も良しとする’という働き方は,教師という職の崇高な使命感から生まれるものであるが,その中で教師が疲弊していくのであれば,それは‘子供のため’にはならないものである。教師のこれまでの働き方を見直し,教師が日々の生活の質や教職人生を豊かにすることで,自らの人間性や創造性を高め,子供たちに対して効果的な教育活動を行うことができるようになるという,今回の働き方改革の目指す理念を関係者全員が共有しながら,それぞれがそれぞれの立場でできる取組を直ちに実行することを強く期待する。

 そう、まさに「教員」が「人間らしく」働くことが「子どもたちのためになる」がスローガンなのです。

 教員採用試験では「働き方改革」について、質問されたり、集団討論のテーマになったりもしますが、今回の「働き方改革」のこの理念はしっかりと理解しておく必要があります。

 さらに、付け加えるならば「これまでの日本の教師の働き方」を否定するものではないことも重要な点で、忘れてはいけません。「働き方改革」はこれまでの教師の姿を否定はしていないのです。

 諸外国では、教員は生徒指導に関わらず、教科指導のみに特化している国もあります。しかし、様々なところで子どもたちと関わろうとする「日本型学校教育」は、教師が総合的な指導を行って児童生徒の人格の完成を目指すというのが特徴で、これまで多くの教員が一生懸命努力してきたことは、諸外国からも高く評価されてきました。 PISAやTIMSSなどの国際的学力調査の結果を見ても、日本の児童生徒の学力は世界トップ水準ですし、清掃や係活動などの「特別活動」によって育まれた集団の一員としての自覚は、大きな災害時にもきちんと整列して順番を待つ姿にも表れているとも言えなくはないと思います。

 とは言え、前述の通り働く時間の増加、業務の多様化は避けがたく、解消の難しい課題です。

 そこで、引き続き「日本型学校教育」の良さを維持しつつ、教員の業務内容を見直すことにより「児童生徒に向き合う時間を十分に確保」できるようにすること!これを目指すことが教員の働き方改革の二つ目のポイントと言えるのです。

 答申にも、しっかり現状の「日本型教育」を維持し、向上させるためのものと明記されています。

3 「働き方改革」のあなたの考えは?と聞かれたら・・・・

 面接で聞かれた時、あなたはどう答えますか?「仕事を効率的にこなし、教師が授業に集中できると考えます」と期待する結果のみ答えるのではなく、上記のポイントを加えながら、自分の言葉で答えると、面接官にもあなたが「働き方改革」の趣旨、目的がしっかり理解されていると伝わります。

 キーワードは、「教師のゆとりが子どもたちにより良い学びを提供できる」「これまでの日本型学校教育」の良さを活かしつつ」・・・ですよね。

 このキーワードを盛り込んで、自分の言葉で答えてみてください・・・うまく言えますか?

4 学んだことを自分の言葉に・・・

 このように、これからも様々なテーマを学び、知識を増やしていきますが、「覚えるだけ」の学びは二次試験では通用しません。最後は、「知識をもとにしたあなた自身の考え、答え」がきちんと語れるかにかかってきます。

「あなたは『働き方改革』について、どのように受け止め、実際にどのような努力をしていきますか?」と聞かれたら・・・・その答えを出すために、次回もこのテーマを掘り下げて、さらに詳しく学びましょう。

 本日は、ここまで・・・・

 次回は「先生たちは、実は残業なんてしていなかった!?」です。

 

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日本型を維持しつつ、業務の効率化を図るのは、タイヤのゴムでガムを作るくらい難しい・・・