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教育法規クイズシリーズ7 その他の重要法規

教育法規クイズシリーズも7回目となりました。今回は、様々な内容がありますので、じっくり考えて◯か×で答えてください。

(*今回も法令に関する場合「障害」とします。)

 1

障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律では、国民に対し、障害を理由とする差別の解消の推進に寄与するよう努める義務を課している。

 2

公立学校においては、障害者から社会的障壁の除去の実施について必要との意思表示があった場合、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することのないよう、当該障害者の性別、年齢および 障害の状態に応じて、必要かつ合理的な配慮をするよう努めなければならない。

 3

就学予定者のうち、市町村の教育委員会が、その者の障害の状態、教育上必要な支援の内容、地域における教育の体制の整備の状況その他の事情を勘案して、その住所の存する都道府県の設置する特別支援学校に就学させることが適当であると認める者を認定就学者という。

 4

子どもの貧困対策の推進に関する法律は、法律に定める学校に対し、就学の援助、学資の援助、学習の支援その他の貧困の状況にある子供の教育に関する支援のために必要な施策を講ずることを義務付けている。

 5

法律に定める学校の教員は、不登校児童生徒が学校以外の場において行う多様で適切な学習活動の重要性に鑑み、個々の不登校児童生徒の休養の必要性を踏まえて、不登校児童生徒とその保護者に対する必要な情報の提供、助言その他の支援を行うために必要な措置を講じなければならない。

 6

教育委員会は、国の策定した教育振興基本計画を参酌し、その地域の実情に応じ、当該地方公共団体の教育、学術および文化の振興に関する総合的な施策の大綱を定めるものとする。

 7

地方公共団体の長は、大綱の策定に関する協議等を行うために、地方公共団体の長と議会から成る、総合教育会議を設けるものとする。

 

さぁ、ここから解答編です。

 

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01   ◯

 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(以下、障害者差別解消法)第4条「国民 の責務」の規定にあります。この法律は、国連採択の「障害者の権利に関する条約」の批准に向けた国内法制度の整備の一環として、全ての国民が、障がいの有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら「共生する社会」の実現に向け、障害を理由とする差別の解消を推進することを目的として、2013年6月に制定され、 2016年4月1日から施行されていましたね。

  • (国民の責務)

第四条 国民は、第一条に規定する社会を実現する上で障害を理由とする差別の解消が重要であることに鑑み、障害を理由とする差別の解消の推進に寄与するよう努めなければならない。

 

  1. ×

「合理的な配慮をするよう努めなければならない」は誤りです。公立学校を含む行政機関等には、努力義務ではなく、「配慮をしなければならない」として義務が課されています(障害者差別解消法第7条第2項「行政機関等における障害を理由とする差別の禁止」)。ただし、私立学校は公立学校とは異なり同法第8条の「事業者」に含まれ、合理的配慮は努力義務となっています。

  • (行政機関等における障害を理由とする差別の禁止)

第七条 行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。

2 行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。

 

  1. ×

「認定就学者」ではなく「認定特別支援学校就学者」です(学校教育法施行令5条第1項)。

2013 年9月の学校教育法施行令の改正により、「就学基準に該当する障害のある子どもは特別支援学校に原則就学するという従来の就学先決定の仕組みを改め、障害の状態、本人の教育的ニーズ、本人・保護者の意見、教育学、医学、心理学等専門的見地からの意見、学校や地域の状況等を踏まえた総合的な観点から就学先を決定する仕組み」(中央教育審議会報告「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進」(2012年7月))とすることとなっています。就学の流れは確認しておきましょう。

  • 学校教育法施行令

第五条 市町村の教育委員会は、就学予定者(法第十七条第一項又は第二項の規定により、翌学年の初めから小学校、中学校、義務教育学校中等教育学校又は特別支援学校に就学させるべき者をいう。以下同じ。)のうち、認定特別支援学校就学者(視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者肢体不自由者又は病弱者(身体虚弱者を含む。)で、その障害が、第二十二条の三の表に規定する程度のもの(以下「視覚障害者等」という。)のうち、当該市町村の教育委員会が、その者の障害の状態、その者の教育上必要な支援の内容、地域における教育の体制の整備の状況その他の事情を勘案して、その住所の存する都道府県の設置する特別支援学校に就学させることが適当であると認める者をいう。以下同じ。)以外の者について、その保護者に対し、翌学年の初めから二月前までに、小学校、中学校又は義務教育学校の入学期日を通知しなければならない。

 

  1. ×

「法律に定める学校」ではなく「国及び地方公共団体」(子どもの貧困対策の推進に関する 法律第10条「教育の支援」の規定にあります)。この法律は、子どもの将来がその生まれ育った環境に左右されないよう、貧困の状況にある子どもが健やかに育成される環境を整備し、教育の機会均等を図るため、子供の貧困対策を総合的に推進することを目的としています(同法第1条)。

  • (教育の支援)

第十条 国及び地方公共団体は、教育の機会均等が図られるよう、就学の援助、学資の援助、学習の支援その他の貧困の状況にある子どもの教育に関する支援のために必要な施策を講ずるものとする。

  • (目的)

第一条 この法律は、子どもの現在及び将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう、全ての子どもが心身ともに健やかに育成され、及びその教育の機会均等が保障され、子ども一人一人が夢や希望を持つことができるようにするため、子どもの貧困の解消に向けて、児童の権利に関する条約の精神にのっとり、子どもの貧困対策に関し、基本理念を定め、国等の責務を明らかにし、及び子どもの貧困対策の基本となる事項を定めることにより、子どもの貧困対策を総合的に推進することを目的とする。

 

  1. ×

「法律に定める学校の教員」ではなく「国及び地方公共団体」ですね。義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律第13条「学校以外の場における学習活動等を行う不登校児童生徒に対する支援」の規定にあります。

  • (学校以外の場における学習活動等を行う不登校児童生徒に対する支援)

十三条 国及び地方公共団体は、不登校児童生徒が学校以外の場において行う多様で適切な学習活動の重要性に鑑み、個々の不登校児童生徒の休養の必要性を踏まえ、当該不登校児童生徒の状況に応じた学習活動が行われることとなるよう、当該不登校児童生徒及びその保護者(学校教育法第十六条に規定する保護者をいう。)に対する必要な情報の提供、助言その他の支援を行うために必要な措置を講ずるものとする。

 

  1. ×

教育委員会」ではなく「地方公共団体の長」 (地方教育行政の組織及び運営に関する法律(以下、地方教育行政法)第1条の3第1項)。

地方教育行政法は、2015年に改正法が施行されています。より地域住民の意思を反映した教育行政を行うため、住民の選挙で選ばれた地方公共団体の長が大綱を定めるほか、教育長の任命等も行うこととなっています。

  • (大綱の策定等)

第一条の三 地方公共団体の長は、教育基本法第十七条第一項に規定する基本的な方針を参酌し、その地域の実情に応じ、当該地方公共団体の教育、学術及び文化の振興に関する総合的な施策の大綱(以下単に「大綱」という。)を定めるものとする。

 

  1. ×

地方公共団体の長と議会」ではなく「地方公共団体の長と教育委員会」です(地方教育行政の組織及び運営に関する法律 第1条の4第2項)。

  • (総合教育会議)

第一条の四 地方公共団体の長は、大綱の策定に関する協議及び次に掲げる事項についての協議並びにこれらに関する次項各号に掲げる構成員の事務の調整を行うため、総合教育会議を設けるものとする。

一 教育を行うための諸条件の整備その他の地域の実情に応じた教育、学術及び文化の振興を図るため重点的に講ずべき施策

二 児童、生徒等の生命又は身体に現に被害が生じ、又はまさに被害が生ずるおそれがあると見込まれる場合等の緊急の場合に講ずべき措置

2 総合教育会議は、次に掲げる者をもつて構成する。

一 地方公共団体の長

二 教育委員会

3 総合教育会議は、地方公共団体の長が招集する。

 

 総合教育会議は、大綱の策定のほか、教育を行うための諸条件の整備、 地域の実情に応じた教育や学術および文化の振興を図るため重点的に講ずべき施策、児童生徒等の生命または身体に被害が生ずるおそれがあると見込まれる場合等の緊急の場合に講ずべき措置に関して、事務の調整を行う組織です(同法同条第1項)。