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教職勉強会の師範のブログ

人権教育を考える② 外国人、ヘイトスピーチ

1 外国人の人権

 4月3日のテーマ「特別な配慮」と言えば・・・誰を指す?で、3つの対象について、お話をしました。覚えていますか?

そう!①障がいのある児童(生徒)②日本語の習得に困難のある児童(生徒)③不登校児童(生徒)の3つでした。

 今日は、この②に関連する「人権問題」についてお話をします。世界中、どの国においても単一民族だけが居住している国はありません。日本も同様に、様々な外国籍の人々が多くいます。国籍を日本に変更しても、前述のように「言葉の壁」があったり、見た目、風貌が違うということで差別を受けたりすることも、よくニュースで耳にします。

 日本国憲法は,当然ながら在留外国人についても等しく基本的人権をもつことを保障し,政府も外国人に平等の権利と機会の保障,文化・価値観の尊重、相互理解などに取り組んでいます。2016年(平成28年)には、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」(いわゆるヘイトスピーチ解消法)」が施行されました。

 「ヘイトスピーチ」とは,特定の民族や国籍の人々を排斥、攻撃する差別的言動のことで、人々に不安や嫌悪感を与えるだけでなく,差別意識を生じさせることになりかねず,決して許されることではありません。

教員採用試験では,第1条(目的)や第2条(定義)が出題されているので、チェックしておきましょう。

 

2 ヘイトスピーチ解消法

 第1条(目的)

 この法律は,本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消が喫緊の課題であることに鑑み,その解消に向けた取組について,基本理念を定め,及び国等の責務を明らかにするとともに,基本的施策を定め,これを推進することを目的とする。

 

第2条(定義)

  この法律において「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」とは,専ら本邦の域外にある国若しくは地域の出身である者又はその子孫であって適法に居住するもの(以下この条において「本邦外出身者」という。)に対する差別的意識を助長し又は誘発する目的で公然とその生命,身体,自由,名誉若しくは財産に危害を加える旨を告知し又は本邦外出身者を著しく侮蔑するなど,本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として,本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動をいう。   

 3 志望自治体の施策をチェックしよう

 なお、人権に関する各都道府県の基本方針を見ると、それぞれの自治体の抱える外国籍の方の人数や特色も書かれていますので、確認しておきましょう。千葉県と東京都の例を下に示しましたが、確かに大きな違いがありますね。

 

■千葉県 「千葉県人権施策基本指針」

第6節 外国人

現状と課題

 県内には、10万人を超える外国人が住んでいますが、言語、宗教、習慣等の違いから、在住外国人が地域社会から孤立してしまう、あるいは一部の外国人に対するヘイトスピーチが行われるといった社会問題が生じています。

 外国人の持つ文化、宗教、生活習慣等における多様性を認め、これを尊重するなど、国際化時代にふさわしい国際感覚・人権意識を育てる必要があります。

 また、外国人県民が、地域社会の一員として暮らし働くことのできる多文化共生社会の実現を目指し、医療・福祉、教育、防災、防犯・交通安全、住宅など生活に密着した分野での多言語での情報提供・相談対応等を充実させることや外国人県民の社会参加のための環境づくりが必要です。

 

■東京都 「東京都人権施策推進指針」

  • 東京に暮らしているのは日本人だけではありません

 東京で暮らす外国人は、平成30(2018)年1月1日現在、約52万人で、都民のおよそ26人に1人に及んでいます。観光や仕事で訪れる外国人も含め、様々な国から東京に集まる人々は、多様な文化や価値観、ライフスタイルをもち、これが東京の伝統文化と相まって、自由で豊かな国際都市東京の活力を生み出しています。

  • 住宅や就労などでの差別

 多くの外国人が暮らす東京ですが、言語、文化、宗教、生活習慣などの違いやこれらへの無理解から、外国人に対する差別や偏見がみられます。例えば、住宅の賃貸や商店などの入店を断る、外国人というだけの理由で、就労に関し不合理な扱いをするということが起きています。

 こうした閉鎖的な態度や差別は、外国人の人権を傷つけることになります。肌の色を問題とするのは、人格的利益の侵害であるとの判決も出されています。

 研修制度を悪用し、外国人の実習生に契約どおりの賃金を支払わなかった事件もありました。

 また、良い仕事があるとだまして海外から女性を連れてきて、暴力や借金で拘束し風俗店で働かせた人身売買組織が摘発されています。このため平成17(2005)年に刑法が改正され、新たに人身売買罪が設けられました。

 近年、特定の民族や国籍の人々を排斥する差別的言動がいわゆるヘイトスピーチとして社会的問題となっています。これらの言動は、一人一人の人権が尊重され豊かで安心して生活できる成熟した社会を実現する観点からあってはならないことです。平成28(2016)年6月には、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」が施行されました。

 この法律では、不当な差別的言動は許されないことを宣言するとともに、その解決に向けて、国や地方公共団体が、相談体制の整備や教育活動、広報啓発などの施策を講じるよう定めています。