人権教育を考える③ 障がい者の人権と「合理的配慮」
1 障がい者への差別
人権問題の13のテーマは覚えましたか?
①女性②子ども③高齢者④障がい者⑤同和問題⑥アイヌの人々⑦外国人⑧HIV感染者、ハンセン病患者⑨刑を終えて出所した人⑩犯罪被害者等⑪インターネットによる人権侵害⑫北朝鮮による拉致問題⑬その他(性同一性障害など)でしたね。
学校教育の中では④の障がい者は重要なテーマです。特別支援教育の推進にとって最も根幹をなす部分です。
「障がいのある人たちを支援をする」なんて当たり前と思うでしょうが、はっきりと障がい者を差別しない法令が出たのがつい最近だというのをご存知ですか?
2 「障害者差別解消法」の理念を理解しよう!
2016年に、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(いわゆる障害者差別解消法)が施行されました。2016年・・・つい最近です。
この法により、すべての国民が障害のある無しに関わらず、相互に人格と個性を尊重し合う「共生社会」の実現に向けて、障害を理由とした差別を解消することを目的としています。「共生社会」も採用試験ではよく出る言葉です。
では1条の目的を把握しておきましょう。
◆障害者差別解消法第1条(目的)
この法律は、障害者基本法(中略)の基本的な理念にのっとり、全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを踏まえ、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本的な事項、行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置等を定めることにより、障害を理由とする差別の解消を推進し、もって全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的とする。
3 「障害」と「障がい」のことば
電信柱の上にある大きな機械の周辺に白い陶器でできた「碍子(がいし)」というのを見たことがありますか?電気を遮断するものなのですが「碍(がい)」という文字は「妨げる」という意味の漢字です。実は「障害者」の「害」という漢字はそもそも「碍」であったようです。しかしこの「碍」は当用漢字に無かったので「害」という文字を当てたとか・・・・
しかし、障害者やそのご家族は「害虫」「災害」などをイメージする「害」はあまり良い感情を持たれていません。
そこで、学校関係者は極力「障がい」と平仮名で表記します。私も、冒頭から「障がい」を使うようにしていますが、法律名は「障害」と書かれているので変更できず、表記の通りにして使い分けています。
皆さんも、採用試験の小論文などでは、このふたつを使い分けるようにするといいですね。
4 「合理的配慮」もお忘れなく
そして、この法律の第7条が重要ですので、ご覧ください。
◆障害者差別解消法第7条(行政機関等における障害を理由とする差別の禁止)
行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。
2 行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。
要するに、国や自治体などの役所や、会社・お店などの事業者が、障がいのある人に対して正当な理由なく、障がいを理由としてサービスを制限することなどを禁止しています。また、障がいのある人から「障壁」となるようなものを取り除いて欲しいと申告された場合は「合理的配慮」をしなくてはいけないと定めています。
実は、この考え方は学校における「特別支援教育」でも同じことなのです。
弱視の子どもの座席を見やすい場所に移す。色弱の子どもが黒板の字がはっきり見えるように「白」「黄色」あるいは蛍光チョークを使うなど。教室の前面は、集中が持続しにくいADHDの子どものために、気が散る掲示物はなるべく貼らないなど・・・・
「合理的配慮」については、ほかにどんな事例があるかを、ぜひ調べてみましょう・