特別支援教育について理解しよう⑤ 様々な「発達障がい」を理解する
1 様々な「発達障がい」を理解しよう
*法律名以外「障がい」という表現にします。
特別支援教育を進めるにあたって、「発達障がいの定義」を正しく理解しておく必要があります。ADHD、LD、アスペルガー症候群、自閉症・・・よく聞く「障がい名」ですが、実は、法令にきちんと示されているのです。といっても、実にわかりにくい表現がされています。
まずは法律を見てみましょう。
●「発達障害者支援法」第2条第1項
「(前略)自閉症,アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害,学習障害,注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。」
・・と政令を見ろ!と書かれています。
では政令である「発達障害者支援法施行令」にはどう書かれているか。
●「発達障害者支援法施行令 第1条」
「(前略)脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもののうち, 言語の障害,協調運動の障害その他厚生労働省令で定める障害とする。」
・・・と厚生労働省令を見ろ!とある。厚生労働省の省令にはどう書かれているのか?
●「発達障害者支援法施行規則」には
「(前略)心理的発達の障害並びに行動及び情緒の障害(自閉症,アスペルガー症候群 その他の広汎性発達障害,学習障害,注意欠陥多動性障害,言語の障害及び協調運動の障害を除く。)とする。」
どうですか?わかりにくいですね・・・。
結局、まとめると下に示したものを指すようです。
①自閉症
③学習障害
⑤脳機能の障害で言語の障害,協調運動の障害
⑥これらを除く心理的発達の障害並びに行動及び情緒の障害
2 各発達障害の関係性を理解しよう
これは、各発達障害の関係性を図示したものです。自閉症とアスペルガー症候群は,あわせて「広汎性発達障害」と呼ばれています。
https://www.gov-online.go.jp/featured/201104/contents/rikai.html
難しいのは,複数の発達障がいが重なり合っていることで、さらに「知的な遅れ」を伴うか、伴わないかという分け方も入り実に複雑です。
さらに「トゥレット症候群」(「チック」と呼ばれる症状が複雑に現れる状態を指し、自分では意識せずに行動が生じる症状のことを指します)や「吃音症」(きつおん)も,発達障害に含まれていますね。こうなると、全てを正確に理解するのには限度がありますので、①自閉症②アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害③学習障害④注意欠陥多動性障害を中心に、他にもいくつかあると頭に整理しておいてください。
3 通常の学級の発達障害のある児童生徒の比率
では、どのくらいの割合で通常の学級にこれらの障がいのある子どもがいるのでしょうか。文部科学省の調査によると,発達障がい害の可能性のある児童生徒は,全体の6.5%程度在席していると言われています。40人学級に換算すると平均2.6人となり,どの学校,どの学級にも共通する課題だということが分かります。
(この表は下記のHPから引用しています。)
「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児 童生徒に関する調査結果について」
4 障がい名を出すには細心の注意を!
発達障がいについて理解が深まると、逆に目の前の子どもたちの言動が発達障がいの特徴と合致すると、「***障がいではないか?」と障がい名を口に出したくなります。
しかし、これはNG!です。障がいを診断するのは医師ですから、勝手に障がいを当てはめて、偏った指導や支援をする、また保護者に「****障がいの傾向があります」などと伝えてしまうと、これはもう人権問題になり兼ねません。
保 護者と障がい名を出しながら、対策や支援方法の検討ができるのは、保護者が医師の診断を受け、なおかつ学校へその障がい名を伝えた場合だけです。
本日の情報をしっかり学ぶことは、自分が学校の教師になった時にどう対応するか?保護者との接し方でどんなところに気をつけるか?などを、合わせて考えることが大切ですね。
●「学ぶ」は、知識を獲得するレベルから、自分の考え方を創造し、実践できる力にするレベルまであります。あなたの、学びはどのレベルですか?もちろん・・・・後者ですよね。