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教職勉強会の師範のブログ

「特別支援教育」について理解しよう④「インクルーシブ教育」

        *ここでも法律名には「障害」を、他は「障がい」と表記しました。

1 インクルーシブ教育の理念をしっかり理解しましょう!

 「特殊教育」と言われ、障がい者の権利を守る法律が不十分で、「障がい者」と「健常者」に二分されていた時代が、以下の10年間で大きく変わりました。まさに、歴史的大転換があったのです。教師を目指すみなさんは、この10年の流れをしっかり理解しておく必要があります。決して、今の「特別支援教育」は当たり前なのではなく、この10年間の大きな流れで整備されたこと、だからこそ「特別支援教育」「インクルーシブ教育」はしっかりと守らなければならないのだ!という気持ちを持ってください。

 2「インクルーシブ教育システム」とは

 2014年1月、日本は国連で採択された「障害者の権利に関する条約」に批准しました。この条約は、障がいに基づくあらゆる差別を禁止しており、第24条には「障害者を包容するあらゆる段階の教育制度(inclusive education system at all levels)」の確保が示されています。このことをいわゆる「インクルーシブ教育システム」と称しています。

*「障害者の権利に関する条約」を詳しくみる

https://www.mofa.go.jp/mofaj/fp/hr_ha/page22_000899.html

●「障害者の権利に関する条約」の「インクルーシブ教育システム」の定義

 人間の多様性の尊重等の強化、障がい者が精神的及び身体的な能力等を可能な最大限度まで発達させ、自由な社会に効果的に参加することを可能とするとの目的の下、障がいのある者と障がいのない者が共に学ぶ仕組みであり、障がいのある者が一般的な教育制度(general education system)から排除されないこと。自己の生活する地域において初等中等教育の機会が与えられること、個人に必要な「合理的配慮」が提供される等が必要とされている。

内閣府 https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai_leaflet.html

 

 この条約の理念を受けて、日本では2011年8月に 『障害者基本法』が改正され.

①「障害者が、その年齢及び能力に応じ、かつ、その特性を踏まえた十分な教育を受けられるようにするため、可能な限り障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配慮」

②「児童及び生徒並びにその保護者に対し十分な情報の提供を行うとともに、可能な限りその意向を尊重しなければならない」

などの改正が行われました。

 その後、中央教育審議会初等中等教育分科会が「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」を2012年7 月に示し、2013年9月には学校教育法施行令の一部改正により、障がいのある児童生徒等の就学先決定の仕組みが変わりました。

 2016年4月には障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)が施行されました。

内閣府 https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai_leaflet.html

3 ドキュメンタリー「インクルーシブ教育システム」の構築に向けた経緯

この一連の流れを、下に「天の声」を入れてまとめてみました。

 ●2006年12月 

教育基本法」の改正

「国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならない」(第4条第2項)の規定が新設

(天の声;じゃ、それまでは障がいのある人は十分な教育が受けられていなかったの?)

 ●2007年4月  

改正学校教育法の施行   特別支援教育の誕生!

*盲・聾・養護学校 →「特別支援学校」の名称に統一

特殊学級     →「特別支援学級」の名称に統一

 ●2007年9月

「障害者の権利に関する条約 」に署名

 この条約は、21世紀初の国際人権法に基づく人権条約であり、2006年に国連総会において採択される。

(天の声;この時点では「署名」しただけ、まだ「批准」(国が最終的に承認すること)するには法律の整備が必要だった。)

 ●2011年8月

障害者基本法」の改正

①「(前略)障害者が、その年齢及び能力に応じ、かつ、その特性を踏まえた十分な教育が受けられるようにするため、可能な限り障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配慮」(第16条第 1項)

②「(略)障害者である児童及び生徒並びにその保護者に対し十分な情報の提供を行うとともに、可能な限りその意向を尊重」(同条第2項)

(天の声;じゃ、これができる前は、障がいのある子とそうではない子が一緒に学ぶことはさせず、本人や保護者に情報を与えず、意向も無視できた・・・?)

 ●2012年7月

中央教育審議会初等中等教育分科会「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」

(天の声;署名した「障害者の権利に関する条約 」の大きな理念である「インクルーシブ教育」実現のための方針決定!いよいよ最終段階まできたね)

 ●2013年9月

改正「学校教育法施行令」の施行

(天の声;この法律で、やっと障がいのある子どもたちの就学先の決定の仕組みが、本人や保護者に寄り添ったものになった!)

*ここで、ようやく2007年に署名した「障害者の権利に関する条約 」に批准、発効(2014)

さらに、もう一歩進めて・・・

●2016年4月

障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」 (障害者差別解消法)の施行

(天の声;駄目押しで、改めて障がい者への差別をやめようと宣言した!やっと、ここまできたか・・・)

 

4「共生社会」の定義

  ここで、改めて「インクルーシブ教育システム」の中で出てくる、「共生社会」について、その定義を確認しておきましょう。

・これまで必ずしも十分に社会参加できるような環境になかった 障がい者等が、積極的に参加・貢献していくことができる社会

・誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合い、人々の多様な在り方を相互に認め合える全員参加型の社会

*このフレーズは、個人面接や小論文、集団討論で使えるので、意味をしっかり把握してスラスラ言葉に出せるようにしておきましょう。