Egurotのブログ

教職勉強会の師範のブログ

「特別支援教育」について理解しよう①

特別支援教育」の理解は重要!

1「特殊教育」から「特別支援教育」への転換の意味

 4月16日に「発達障害者支援法」についてお話をしました。その中で、「特別支援教育」以前、日本の障害児教育は「特殊教育」と呼ばれ、盲学校や聾学校養護学校などの、「特殊学校(特殊教育諸学校)」が設置されていたこと。そして、これらが「特別支援学校」という名称に改められ、小中学校の学校内に設置されていた「特殊学級」も「特別支援学級」という名称に改められたことに触れました。そこでは、「人権」との関わりの流れで「特別支援教育」をみましたが、これから「特別支援教育」そのものの理念や具体的な有り様を、順にお話ししていきます。

 さて、「特殊教育」から「特別支援教育」へ変わったのは、単に名称だけが変わったということではなく、障がいのある児童生徒を主たる対象としていた「特殊教育」に対し、「特別支援教育」はそうした子どもに加え、知的な遅れのないADHAや学習障害アスペルガーといった、これまで通常学級にいた「発達障がい」の子どもも含めたより広い範囲を対象にするようになったという大転換が行われたことを意味します。

 このことは、「特殊教育」が特殊学校や特殊学級で行われる教育であったのに対し、「特別支援教育」は、すべての学校とすべての教室で行われるようになったとも言えます。

 さらに、特殊学級、特殊学校で勤務する教職員だけでなく、全ての教職員が「特別支援教育」について理解を深めておかねばならないため、教員採用試験では重要なテーマであるとも言えます。

 ですから、きちんと理解した上で、「特別支援教育に参画できる」意識をしっかり持つようにしましょう。

2なぜ「特別支援教育」に転換されたのか

「特殊教育」から「特別支援教育」 への転換が図られた大きな理由を考えてみましょう。

 一番大きいのは、「障害者の権利に関する条約」の採択をはじめ、障害のある人とない人との「共生社会の形成」が、国際的な動きとしてあったことです。「条約」は国際社会の中の日本の立ち位置を明らかにするものですから、それまで十分ではなかった国内法の整備を国を挙げて行って条約締結を果たしました。

 二つ目の理由は、文部科学省の調査により、実は通常学級にも40人中2〜3人は「特別な教育的支援」を必要とする児童生徒が在籍していることが明らかになったことです。

 これまでは、同じ通常学級に在籍しつつ「あの子、不思議な子だね」「変わり者」とされてきた子どもたちにも、苦手なところをフォローして挙げなくてはいけないという認識が深まったのです。三つ目に、特殊教育諸学校で対応していた児童生徒においても、重度障害や重複障害のある者が増えたことで、盲・聲・養護学校などが単独で対応するのが難しくなってきたことも背景にあります。

 いずれにしても、「通常学級の子ども」と「特殊学校・特殊学級の障がいのある子ども」という分け方だった日本の教育を、「全ての子に得意なこと、苦手なことがあるのだから、苦手なことに支援をしよう」という、考え方に大きく舵を切ったことは素晴らしいことです。

 

3 現状の制度的枠組みは?

 全ての子どもを対象に・・・とはいっても、障がいの程度や障がいの種別によって、より専門性、学習しやすい環境を整えた学級や学校を無くしたのではありません。

①小・中・高校には、必要に応じて特別支援学級が置かれ、少人数体制での指導が行われます。(一応「特別支援学級」は障害種別ごとに、知的障害、肢体不自由、病弱・身体虚弱、弱視、難聴、言語障害自閉症・情緒障害の7種類の学級がありますが、最近は種別にこだわらず生まれ育った地元の学校へ通いたいという願いを叶えるようになっています。)

 また、通常学級に在籍する児童生徒においても、「言語」「聴覚」「ADHD」などの障がいの程度に応じて週1〜8時間、別の場で指導を受ける「通級指導」も行われています。

②「特別支援学校」は、幼稚部・小学部・中等部・高等部に分かれ、障がいの程度が比較的重い子どもを対象に、専門性の高い教育が行われます。また地域内の小・中・高校などに助言・援助をするなど特別支援教育を進めていく上で、「センター的機能」を果たします。

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特別支援教育の関係図

③義務教育のスタートである小学校への就学先に決定も大きく変わりました。これまでは就学指導委員会という組織で、入学先の決定をしていましたが、市町村教育委員会の就学先決定までの手厚い相談期間を大切にし、障がいの状態、教育上必要な支援の内容、地域における教育体制の整備状況、本人や保護者の意見、専門家の意見などを判断材料に、合意形成を図って決定することとなりました。

 この合意形成を図るために、就学前の幼児期から早期に本人の「困り感」「保護者の願い」を知り、本人にとって最も良い教育環境について十分話し合うことに教育委員会も努力をしています。

 

 次回は、学校の中でどのように「特別支援教育」が行われているかをお話しします。

参考;文部科学省の「特別支援教育の資料」

https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/1406456_00001.htm